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コトバ

コトバ_b0039246_2164748.jpg最近いろんなことを話してくれる患者さんがいます。

四月のはじめは、私の方もぎこちなくって、こなさなければならない業務と、病気を観察する視点だけで必死で。
そして余裕もなく、あんまりゆっくりと話をすることもできず、患者さんのほうも一通りのことをしたら、「ありがとう」といって、寝るみたいなかんじ。言葉も少ない、あまり多くを語らない患者さん。

この患者さんは癌の末期。
自分自身でも自分の体のこと、あとわずかな人生だということもわかっておられるだけに、どうやって話をすればいいのか、考えれば考えるほど私も辛くなってしまって、病室に足を運ぶことがいつのまにか苦痛になっていた気がする。
苦しいのは私じゃなくて、患者さんだということもわかっていたけど、私も苦しかった。

そんな時ふっと患者さんからでた言葉
「どう?仕事にはもう慣れた?もう一人立ちなんか?」
微笑みながらも私を気遣うような眼差しで、かけてくれた一言。
この一言で一気に私の中にあったものが、溶け出して何か張り詰めていた緊張が抜けたような気持ちになりました。

それからは、重々しくならないような疾患の観察もできるようになり、自然と話ができるようになって、患者さんもいろんな話をしてくれて笑うことも多くなってきました。
つい先日、また私の仕事を気にしてくれてる患者さんは、まるで自分の親のようにいろんなことを話してくれました。

「怒りたいときはいつでも怒ればいいんや。泣きたいときはいつでも泣けばいいんや。一日中、笑顔でいることなんて人間にはムリなんや。ためたらあかん。人にあたることがダメなんていわん。自分の気持ちに素直になることも大事なんやで」

「その日あったことはその日。明日は明日や。明日にその日を持ち込んだらアカン。いつまでも嫌なことを思い浮かべてたら一日損する。
人生なんて何がおこるかわからへんもんなんや。
今日、悪いことがあったとしても、明日はイイことが待ってる。
そう思って生きていかんと、人生なんて生きられへんからな」

なんでもないようなこの言葉は、仕事で一杯一杯になっている私の心に響くとともに、毎日病院のベッドで過ごされている患者さんの自分自身への思いが伝わってきました。
残りの人生を病院のベッドでしか過ごせない患者さんの、やりきれない思いと、それでも、強く自分らしく生き抜きたいという思いが、私の胸を揺さぶりました。


次の日、落ち込んでいた自分に○○さんの言葉を言い聞かせ、奮い立たせて出勤しました。
ちょうどその日、またその患者さんの受け持ちだったので、朝、訪室したときに、「昨日もらった○○さんの言葉のおかげで元気になりました」っていう話をすると

「いつも励ましてもらって、元気をもらってるのはこっちなんや。こっちこそ、いつもありがとうな」
はにかんだような○○さんの顔がとても印象的で、透明感があって、男の方なのに美しいと思いました。
どんな困難をも乗り切ろうと頑張る人や、人生あきらめない人って輝いているんだなぁ~とガラにもなく思ってしまいました。

人生なんてどうなるかわからない。
どう乗り切って、生ききるかは自分次第。
自分の精神力次第。
私らしく生きるためにはどうあればいいのか。
まだまだ人生ひよっこの私。
とりあえず、この言葉を胸に明日も頑張ろう。
by himenobile | 2006-05-26 21:01 | ♪看護&医療

チャリンコを走らせながら日々の思いを書き綴る、小ナスの言いたい放題日記 


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